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第9回ものづくりワールド名古屋

 

自動車技術会、人とくるまのテクノロジー展2019 名古屋を開催

 自動車技術会は7月17日~19日、名古屋市のポートメッセなごやで自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2019名古屋」を開催した。内燃機関搭載車の一層の燃費改善に加え、ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)などの電動化、先進運転支援システム(ADAS)などに対応する最新の製品・技術が披露された。
会場のようす会場のようす

 ベアリング&モーション関連技術では以下の展示があった。

 イグスは、無潤滑・メンテナンスフリーで使用できる樹脂製すべり軸受「イグリデュール」や球面ベアリング「イグボール」、リニアガイド「ドライリン」、樹脂製ケーブル保護管「エナジーチェーン」などによる自動車の軽量化、静音化、クリーン化、コストダウンなどを提案した。今回はまた、工作機械の各種ドアなどで採用が進んでいるリニアガイド「ドライリンW」の車載ドア・スライド部や、自動車工場の各種ドアの開閉への適用を示した。スライド部のベアリングには固体潤滑剤を含有しているためメンテナンスフリーで滑らかな動きを実現する「イグリデュールJ・J200」を使用、同高性能樹脂ベアリングとアルミニウム製本体からなるキャリッジは軽量のため稼働にかかるエネルギーも削減できる。従来から使用されている直動案内では、左右の扉のレベルが違うなど誤差がある際に取り付けでの誤差の吸収が難しいという課題があったが、取り付け精度がラフな場合でも容易に組付けが可能で、工数を削減できる。また、スライド部のベアリングは相手攻撃性の低いイグリデュールのため、レールが摩耗することがほとんどなく、ベアリングのみの交換ですむというメンテナンスの簡易性もトータルコストダウンにつながっているという。

イグス「ドライリンを用いたドア開閉の提案」イグス「ドライリンを用いたドア開閉の提案」

 NOK は形状設計・材料設計・表面機能設計・グリースという各低フリクション化技術を結集した高機能シールブランド「Le-μ's(Low emission μ seal、レミューズ)」を披露、電動車(e-Mobility)に求められている高速対応や静粛性・腐食対策等に貢献できる技術を多数紹介した。走行モーターなど電動高速回転機器において超低トルク・高密封を両立するシール「GlideX™シリーズ」は、シールしゅう動面に動圧すべり軸受機構を発現する溝形状(表面テクスチャリング)を配置して流体潤滑状態で作動させることで、単一しゅう動面に超低トルク性と高い密封性という複数機能を世界で初めて付加。本製品の表面テクスチャリングを施したシールしゅう動面は従来のシールしゅう動面に対して、トルクを約90%低減させることに成功している。EVモーター用冷却システムやEV用減速機、電動式/機械式ウォーターポンプなど幅広い適用が見込まれている。そのほか、ECU筐体などアルミ筐体において、シール部品との併用でシール面の微小隙間を埋めて塩水腐食を抑制する「アルミ腐食防止グリース」や、同社が蓄積してきたゴム材料開発・製品仕様提案・振動評価解析というNVHソリューションによる、電動車の静粛性向上に貢献する防振・防音技術などを提案した。
 NOK「GlideX™シリーズ」 NOK「GlideX™シリーズ」

 ジェイテクトは、クリープ(ハウジングに対して外輪が回転してしまう現象)による摩耗に起因するハウジングや軸受の寿命低下対策として、従来一般的だった外輪肉厚化をせずにクリープ抑制を実現、ハウジング摩耗量の50%低減を可能にする「クリープ摩耗抑制玉軸受」を紹介した。自動車(特にCVTやHV)の変速機用玉軸受など大きなラジアル荷重がかかる軸受には、外輪ひずみによるクリープが発生しやすい。クリープが発生すると軸受とハウジングとの間で摩耗が進行し、軸の芯ずれや傾きが大きくなり、実機ユニットに不具合が生じる恐れがある。 同社では、外輪の外径中央部に極浅い溝を設ける構造を世界で初めて採用し、玉と外輪軌道の接点から外輪外径とハウジングとの接触部までの距離を外輪厚肉化製品と同等とすることで、外輪肉厚を35%アップした場合と同水準のクリープ抑制を可能とした。自動車変速機等の軽量化やコンパクト化に貢献できることをアピールした。そのほか、自動運転に対応しステアリングホイールの操作を電気信号で転舵装置に伝える「ステアバイワイヤシステム」や本年11月に本格量産を予定している、動作温度範囲-40~+85℃ を実現する「高耐熱リチウムイオンキャパシタチウムイオンキャパシタ」などを紹介した。

ジェイテクト「クリープ摩耗抑制玉軸受」ジェイテクト「クリープ摩耗抑制玉軸受」

 大同メタル工業は、エンジンの機械損失低減に貢献するエンジンベアリングの低フリクション技術として、軸受表面に固体潤滑剤を分散させた樹脂層を施した耐摩耗性向上コーティングによってアイドルストップ仕様エンジン用軸受として採用されている「DLA02」、さらに最近開発された耐摩耗・耐焼付き性コーティングを施したエンジンベアリング「DLA06」を紹介した。開発品は、軸受表面に固体潤滑剤を分散させた樹脂層を若干柔らかくすることで異物混入時の耐摩耗性を高める異物埋収性を付与したほか、低粘度化の進むエンジンオイルの使用条件下で発生しやすい温度上昇を抑制、焼付きを防ぐ。また、長年のエンジンベアリングの製造で培われた独自焼結技術によって生み出された、高性能アルミ吸音材「NDCカルム」を紹介した。アルミ粉末を多孔質に焼結した吸音材で、2~3mmの板厚で優れた吸音特性を実現するほか、一般の吸音材にはない耐水、耐食性、耐熱性を持つ。アルミ板より軽量で、しかも金属的強度を有するため機械加工も容易にでき、部品としての供給も可能。また、電磁シールド性も持つ。新幹線の防音壁から建築用内装材、プレスラインや天然ガス圧縮機など機械用の防音ボックスまで広範に利用されている。自動車分野への適用例としてはマフラー(サイレンサー)内側への装着やエンジンルーム内壁への装着、車外騒音規制に対応するためのエンジンアンダーカバーへの装着(路面側への装着で反射音を減衰)などが見込まれるという。

大同メタル工業「NDCカルム」大同メタル工業「NDCカルム」 大豊工業はアコースティック・エミッション(AE)法を用いてエンジン用すべり軸受の耐焼付き性の評価、さらには耐久性向上のための設計へのフィードバックの取組みを紹介した。燃費向上技術としてアイドリングストップシステムの採用や低粘度オイルの普及が進む中でエンジン用すべり軸受の使用環境が年々厳しさを増していることから、軸受のさらなる性能向上、特に耐焼付き性の向上が求められている。耐焼付き性の評価では従来、主に焼付き時の荷重や面圧によって材料や設計の有意差が判断されるほか、評価中の摩擦トルクや軸受背面温度の推移をもとになじみや表面損傷が推定されてきたが、それらの手法では焼付きに至る複数の損傷を切り分けることが困難だった。そこで同社では焼付き過程の損傷を切り分け、焼付きの主因子となりうる損傷の特定とその感度を明らかにする手法を検討している。エンジン用すべり軸受の荷重ステップアップによる焼付き試験中のAE信号計測を行い焼付き過程に伴うAE周波数変化の調査と発生する損傷形態の考察を行った結果、焼付き直前までは掘り起こし摩耗と軸受表面の塑性変形が繰り返し発生し、焼付き直前では凝着摩耗とその結果剥がれる軸受材による掘り起こし摩耗が発生すると考えられ、これらが進行すると油膜が形成できなくなって焼付きに至ると考えられるとの考察を得ている。シミュレーション技術と併せてこうした耐久性向上を図りつつ、省燃費に直結する軸受の低フリクション化を進めていくとアピールした。

大豊工業「AE法を用いたエンジン用すべり軸受の耐焼付き性評価など信頼性向上技術」大豊工業「AE法を用いたエンジン用すべり軸受の耐焼付き性評価など信頼性向上技術」

 THKは、簡単・安全・グローバル対応で予兆検知を実現する新IoTサービス「OMNI edge(オムニエッジ)」を紹介した。直動転がり案内「LMガイド」に後付けが可能な専用センサーのデータと独自のアルゴリズムにより、LMガイドの損傷や潤滑状態などを数値化する「THK SENSING SYSTEM」に加えて、シスコのエッジコンピューティングルータもしくはスマートフォンに集約したデータを、ドコモのモバイル回線を介してセキュアに収集。「THK SENSING SYSTEM」で取得したデータを用いることで、LM ガイドの状態診断や装置の予兆保全を可能とするアプリケーションとして提供できるようにする。IoT 化に必要なデータ収集・蓄積・分析といった設計・構築作業を自動化することで、IT 担当者不在の製造現場でも簡単に短期間での導入を可能とし、保守運用に関してもトータルサポートを実施することで、ユーザーの負担軽減につながる。自動車の生産ラインを監視するシステムとして提案するとともに、車載用としてはアクティブサスペンションの監視・制御などに利用が可能としている。そのほか、直動転がり案内「LMガイド」を利用したシートアレンジの変更やテーブル・キャビネットなどの移動、レイアウトの変更、シートアレンジの変更などを提案した。
 THK「OMNI edge(オムニエッジ)」 THK「OMNI edge(オムニエッジ)」

 不二越は、ドライブトレーンにおいて大トルクに伴う高荷重への対応から多用されている円すいころ軸受に代わって、玉軸受化によって低トルク化しつつ剛性を確保する「デファレンシャルギヤ用複列4点接触玉軸受」と「ELT(Extra Low Torque)軸受」を紹介した。前者は4点接触によって向上させた支持剛性を複列化でさらに高めた。また、一体型のため予圧管理が不要で大幅な損失低減が可能。後者は2列になった玉軸受を内輪側と外輪側に分離可能な設計としたことで、円すいころ軸受と同様の組付けを可能にした。接触点が傾いたアンギュラ玉軸受を2列にしたもので、ボールの接触点は2点だが、接触点の傾きに加えて予圧をかけて使うことで高い支持剛性を実現している。さらに、軸受サイズを変更せずにクリープ現象を抑制する「トランスミッション用耐クリープ軸受」を展示した。外輪歪みによるクリープへの対策軸受としては、軌道溝を多点接触化することで荷重を分散し外輪変形量を抑制する「多点接触玉軸受」や外輪外径に特殊コーティングを施すことでハウジングの摩耗を抑制する「外径コーティング軸受」を、連れ周りによるクリープへの対策軸受としては、「Oリング付き軸受」や「外径コーティング軸受」を提示した。

不二越「ELT(Extra Low Torque)軸受」不二越「ELT(Extra Low Torque)軸受」

 ドイツRollax社(国内販売代理店:オオカ商事)は、ベアリング&モーション技術を応用したトランスミッション・ギヤボックス部品やストラットサスペンション部品、ステアリングシステム部品、シート部品を紹介した。ギヤボックス部品では、ボールベアリング搭載のメインボールの採用によってしゅう動特性を高めたデテントピンや、特殊なボール材質の使用によって高い位置決め精度を実現するボールスリーブなどを、シート部品では、ユーザーの仕様に合わせたピニオンおよびマウンティングプレートが選べて静音で調整できるシート高さ調整機構などを、ストラットサスペンション部品では、コンパクトデザインで高いアキシアル荷重に対応しつつ低い始動トルクを実現するストラットベアリングなどを、ステアリングシステム部品では、インナーおよびアウターキャップのデザインを自由に選択でき、樹脂製アウターキャップの変形によって組付けが容易なステアリングコラムベアリングなどを展示した。従来の内燃機関搭載車だけでなく、MHEV・PHEV・EV等の次世代自動車向けのパワースプリットポンプ用フリーホイールベアリング等も生産していることをアピール。ドイツ、中国、メキシコ(2020年稼動予定)に生産拠点を構え、IATF16949に則ったグローバルな生産・供給体制を構築しているという。

Rollax社「ベアリング&モーション技術を応用した自動車部品」Rollax社「ベアリング&モーション技術を応用した自動車部品」