ジェイテクトは11月19日、東京都中央区の東京ジェイテクトビルで記者説明会を開催、安形哲夫社長が、軸受、ステアリング、駆動、工作機械・メカトロニクスの各事業におけるCASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)対応や新規事業の展開について説明した。
CASE対応については特にAutonomous(自動化)とElectric(電動化=電気自動車)のテーマに絞って取組みを紹介。
自動運転への対応では、自動走行技術領域をステアリング・駆動アシストで支援していく。本年4月にデンソー、アイシン精機、アドヴィックスと共同で設立した「J-QuAD DYNAMICS」を母体に、ステアリングやブレーキなどの統合制御システム開発によってサポートしていく一方、高精度舵角制御やハンズオンディテクション、手動操舵と自動操舵をシームレスに切り替える操舵権限移譲技術など、ステアリングを介して人とシステムが協調することによって、より快適な自動運転を実現していく姿勢を示した。
また、電動パワーステアリング(EPS)搭載が難しく自動運転化が困難と見られていたバス・トラックなど大型輸送車向けに、自動運転対応ステアリングシステムを開発。EPSの制御技術をコラム同軸アクチュエータに応用、アクチュエータが人の操作の代わりとなり、油圧パワーステアリング(HPS)を操作する。
さらに、ステアリングホイールの操作を電気信号で転舵装置に伝える「ステアバイワイヤシステム」について、操舵フィーリングの向上を実現するとともに自動運転におけるシステムによる操作とドライバーによる操作をスムースに融合・移譲する制御技術を実現する次世代のステアリングシステムとして開発を進めてきたが、すでに1車種で採用が決まったと報告。レイアウトフリーで居住空間拡大に貢献するこのステアバイワイヤシステムを、補助電源システムとして-40~105℃の動作温度範囲に対応しつつ冷却システム不要で同様に省スペース化に寄与できる「高耐熱リチウムイオンキャパシタ」とセットで提案していく意向を示した。
同リチウムイオンキャパシタは自動車分野以外でも航空機、建設機械・農業機械など幅広い分野で500件を超える引き合いがあり、すでに鉄道で採用が決まっている。本年10月からは愛知県岡崎市の花園工場で量産を開始、第一ライン生産能力は48万セル/年まで拡張可能という。
電気自動車(EV)化への対応では、ビュアEVの市場が当面は急拡大することはなく、ハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド(PHEV)が主流で発電機としてのエンジンが搭載され続けるとの見方を踏まえて、エンジンの小型化が進む、モータの採用が拡大していく、電池の搭載が拡大していく、というトレンドを示した。
このトレンドに伴ってEV用モータなどに対応する軸受開発製品としては、「高速回転対応深溝玉軸受」や「クリープ摩耗抑制玉軸受」といったモータ・減速機用玉軸受によって、電動ユニットの小型化へ貢献していく。また、「電動ブレーキ用ボールねじ」など、モータの回転運動を効率的に直線運動に変換する電動アクチュエータ用ボールねじによって、電気自動車/自動運転に貢献できる製品群を充実させていく考えを示した。
そのほか、駆動事業ではガソリンエンジン車のアイドルストップ用に搭載されていた電動オイルポンプをEVの駆動モータの油冷装置として活用するほか、工作機械・メカトロニクス事業ではEV部品加工の生産性向上に貢献するギヤスカイビングセンタや研削盤、高精度ロールの加工に供する円筒研削盤やリチウム電池製造ラインなど電池生産システムの提供などに注力していく。
アシスト技術やロボティクス技術、トライボロジー技術といった同社の技術・強み・知見を活かし、労働人口不足やものづくりの知見不足、水問題といった社会課題を解決する商品・サービスの開発を進める新規事業では、先ごろ開発した自立支援歩行器「J Walker テクテック」に関してリハビリを長続きさせるためのゲーミフィケーションを採用したことや、製造業マッチングクラウドサービスを開始したこと、実績の多い水位センサとIoEや制御技術を掛け合わせて井戸の流入量と揚水量を見える化し制御、井戸の長寿命化に貢献する「J WeLLシステム」を人口増に伴う水不足が深刻なインドで試験運用を始めていることなどを報告した。
同社では今後、同社前身の光洋精工・豊田工機から支えてきたモビリティ、インダストリー領域に加え、こうした新規事業を創出することで“ヒューマンライフサポート”などへと事業領域を拡大していく。