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SEMICON Japan 2024

 

NTN、動力伝達装置向け低昇温・低トルク円すいころ軸受を開発

 NTNは、自動車のトランスミッションやデファレンシャル用の「低昇温・低トルク円すいころ軸受」を開発した。新開発の樹脂保持器の採用や軸受内部設計の最適化により、世界最高水準の低昇温性(耐焼付き性)と低トルク性を実現、次世代モビリティの市場ニーズに対応する。電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)を含む自動車用トランスミッション、自動車用デファレンシャルなど、動力伝達装置用軸受として拡販、2026 年度に20 億円/年の販売を目指す。

低昇温・低トルク円すいころ軸受
低昇温・低トルク円すいころ軸受

 

 近年、自動車産業がスマートモビリティやCASE に代表されるように大きな変革期を迎える中、電動化やカーシェアリングによる航続距離の延長などを背景に、動力伝達装置の高効率化が加速している。これにより、装置内の潤滑油量の低減や低粘度油への切り替えが進められ、軸受にはこうした過酷な潤滑条件下の対応や、より一層の低トルク化が求められている。

 こうした新たに浮上した次世代モビリティの市場ニーズに対応する商品として開発された「低昇温・低トルク円すいころ軸受」は、新型樹脂保持器に付与した凹み形状によって潤滑油の不足時にころ端面への給油が可能となり昇温を抑制(図1①)するとともに、ころ端面と内輪大つば面間のすべり接触部の潤滑性が向上する設計を適用し、温度上昇を抑制(図1②)。動力伝達装置における低粘度オイルの使用や、電動化による急加速時のオイル量が少ない潤滑条件を想定し評価(条件は、常温から無給油運転で軸受外輪が100℃到達までの時間で評価)した結果、同社標準品比10 倍向上の低昇温性が確認されている(世界最高水準)。

 また、新型樹脂保持器が軸受内部への過度な潤滑油流入を抑制し潤滑油の撹拌抵抗による回転トルクを低減(図1③)するとともに、世界最高水準の軸受定格寿命(長寿命)と許容回転速度の実現をコンセプトとして2017年に開発した「自動車用ULTAGE 円すいころ軸受」のころ設計や、軸受内部設計の最適化による長寿命効果で軸受を小型化し、ころと軌道輪(内外輪)の転がり接触長さを減少させることで回転トルクを低減(図1④、図2①)。さらに軸受の小型化により、ころのピッチ円径を小さくし、ころと内外輪間の周速を低減、転がり抵抗を抑えることで回転トルクを低減した(図1⑤、図2②)。これらにより、同社標準品比で回転トルクを66%低減(世界最高水準)。優れた低トルク性によって、動力伝達装置のさらなる高効率化ニーズに対応する。

 

開発品断面構造図と特徴
図1 開発品断面構造図と特徴

 

標準品と開発品の比較(内部設計の最適化)
図2 標準品と開発品の比較(内部設計の最適化)

 

 開発品は、低昇温性、低トルク性という特長をコンパクトな軸受サイズで実現できるため、動力伝達装置の高効率化や車両の省燃費 ・省電費化だけではなく、装置の小型 ・軽量化、ひいては車内スペースの拡大や運転時の快適性の向上にも貢献する。NTNでは、開発品およびその要素技術を次世代モビリティに適用可能な仕様としてグローバルに提案していく。