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SEMICON Japan 2024

 

日本精工、工作機械スピンドル用高信頼性単列円筒ころ軸受技術を開発

 日本精工は、工作機械スピンドル用軸受向けに、新開発のころ案内保持器の採用により、組立や慣らし運転時の作業負荷低減と信頼性向上を両立する技術を開発した。今後、市場の反響を踏まえながら、2021年度以降の早期の量産化を目指す。

NSK工作機械主軸用軸受

 

 マシニングセンタの主要要素であるスピンドルに使用される単列円筒ころ軸受は、グリース潤滑で使用する際、スピンドルを組み立てた後に、グリースを最適な位置に最適な量配置するための「慣らし運転」という工程に長い時間を要し、生産性向上のネックとなっている。また、オイルエア潤滑で使用する場合、低速回転時に軸受温度が異常に上昇してしまう課題もあった。

 これらの問題を解決する手段としては、保持器の位置を安定させるための方法を「ころ案内方式」にすることで可能になるが、この方式では保持器に過大な力が掛かることがあり保持器が破損しやすいという課題があることから、これまでは「外輪案内方式」が一般的だった。

 開発した新技術では、従来品と同等の耐久性を有した「ころ案内方式」保持器の開発に成功したほか、保持器形状の改良によって余剰なグリースの排出性を向上させ、グリース潤滑での慣らし運転時間を外輪案内方式に比べ最大約7割短縮した。

 また、オイルエア潤滑においては、ころ案内方式の採用によって、従来の外輪案内方式で課題だった、低速運転時に軸受内部へ潤滑油が過剰滞留して発生する軸受の異常昇温も低減。これにより、オイルエア潤滑でもスピンドルの安定した運転が可能となる。

 さらに、ころ案内形式で問題となる保持器の破損を防止するため保持器の形状と材料を最適化したことで、ころ案内保持器の耐久性(信頼性)向上を実現した。

 本技術は、グリース潤滑スピンドルの組立時間短縮により、工作機械メーカーでの生産性向上に貢献するほか、オイルエア潤滑での異常昇温の低減、ころ案内保持器の強度向上により、運転時の高い信頼性に貢献する。

 自動車部品/一般機械部品加工用マシニングセンタなどで使用されるビルトインモータスピンドルでは、スピンドル本体の発熱によって軸方向の膨張が発生するため、スピンドルのリア側に円筒ころ軸受が採用されているが、今回開発された技術は、このリア側支持用軸受に最適としている。