日本粉末冶金工業会(JPMA)は1月20日、東京都港区のインターコンチネンタル東京ベイで、「令和2年 新年賀詞交歓会」を開催した。
当日はまず井上洋一会長(ファインシンター社長)が挨拶に立ち、「令和時代に入り世の中の変化のスピードがますます速くなり、日本の粉末冶金業界も乗り遅れることなく自ら次世代に向けた変化を成し遂げていく必要性を強く感じている。ビジネスの環境も厳しさを極め、顧客である自動車メーカーもユニットメーカーも、世界的な合従連衡を行いながら生き残りの道筋を探っている。AIやバーチャルの技術がもてはやされる昨今だが、リアルなものづくりの技術なくして、文明の進化も人々の豊かな暮らしもないことは言うまでもない。この度10年ぶりに『工業会大賞』を授与した案件(ファインシンター、トヨタ自動車「ディスコネクト部品の焼結化」)は、複雑形状の部品をネットシェイプにより製作し大幅な原価低減を達成、世界中で販売される量産車に搭載されたもので、まさに粉末冶金の本領発揮という感があり大変喜ばしい。こうした粉末冶金の可能性を拡げる製品が次々と生み出されるよう注力していかなくてはならない。JPMAはリアルなものづくりを支える企業集団共同組織として本年も技術革新、マーケティング、新しい価値創造、広報渉外、標準作成、行政との連携など、委員会活動を一層強化して、会員全員のサポートを全力で行っていく」と語った。
続いて、来賓の挨拶に立った経済産業省 製造産業局 素形材産業室長の松本真太郎氏は、「不確実性の高まる世界において、日本は類を見ない堅調な安定性を保っており、米中問題や中東問題など世界の抱える問題の解決に向けて世界をつなぐ“結節点”としての役割を担う。一方、日本のものづくり産業の重要な基盤技術であり結節点となる素形材技術、粉末冶金技術の高付加価値や重要性を再認識すべき。オリンピックイヤーとなる本年は日本の粉末冶金技術を世界に発信する好機であり、同時に、わが国の若い世代へとその技術の重要性をつないでいきたい。わが国は若手への情報発信力が弱いと感じている。粉末冶金業界の技術力やノウハウ、若い力を活用することで粉末冶金技術の発展、ひいては日本の産業競争力の向上、結果として世界の平和維持へとつながることを祈念している」と述べた
さらに、粉体粉末冶金協会(JSPM)の吉村一良理事(京都大学教授)は「地球環境問題から粉末冶金製品の需要の8割を占める自動車業界では電動化や自動運転といったCASE(コネクテッド・自動運転・シェアリングとサービス・電動化)やMaaS(サービスとしてのモビリティ)など百年に一度の変革に起因する、粉末冶金業界の根幹に関わる難しい諸課題に対して、JPMAとJSPMという粉末冶金製品を支える両輪の連携強化で対応していきたい」と挨拶した。
また、乾杯の挨拶に立った青木茂夫JPMA(ポーライト社長)常任理事は、「我々の利用する焼結法はネットシェイプでエネルギー削減、SDGsに貢献する製法。リアルなものづくりを支える技術として業界一丸となって発展させ、ひいては当工業会の発展につなげていきたい」と述べた。