自動車用動力伝達技術研究組合(TRAMI)主催、東京理科大学トライボロジーセンター(佐々木信也センター長)による「第4回 産×学連携講座—来て見て触って描いてみよう未来のEV—」が12月15日、 東京都葛飾区の東京理科大学 葛飾キャンパスで開催、オンサイト、オンライン合計で約600名が参加した。
TRAMIは2018年4月、複数の企業・大学・独法等が協同して試験研究を行うことにより、単独では解決できない課題を克服し、技術の実用化を図るために設立。現在、組合員は、主要自動車会社およびサプライヤー11社で構成されている。
本イベントは、参加者に産学連携・コミュニケーションの重要性を感じてもらうとともに、学生には現在学んでいる学問と産のつながりを体験してもらう場になることを目的に、企画がなされたもの。
当日はまず、以下の内容で講演が行われた。
■学から産へ
・「今更聞けない!? 電気自動車を支える基盤技術」星 伸一氏(東京理科大学)…電気自動車の種類と基本構成、電気エネルギーを機械エネルギーに変える「モータ」の原理と、モータに適切な三相交流電流を流す「電力変換回路(インバータ)の原理を説明したほか、トルクリプル抑制制御や強化パレート進化型アルゴリズムを用いたNV抑制制御などTRAMIと星研究室での共同研究実施例を紹介。電気自動車にはさまざまな課題があり、さまざまな領域の研究者・技術者の連携や産学での連携が重要と総括した。
■産から学へ
・ 「現地駐在員は見た!? ヨーロッパの電気自動車事情」松江浩太氏(マツダ)…ドイツという欧州先進地域で体験したBEVの、出先での充電に不安がない、充電さえ早ければ航続距離は重要ではない、といった簡単で便利な点を紹介する一方で、社用車でなく自分で購入するには高価すぎる点に言及。日本でBEVを普及させるには充電インフラの充実が不可欠で、かつ急速充電期の出力も最低でも150kWが必要とした。学生に対しては日本だけを見ていると世界から取り残されるため、いろいろな新しいものに興味を持ち自分で体験することを勧めた。
・ 「不便なのにおもしろい!? マニュアルBEVで見つける電気自動車の新たな魅力」勇 陽一郎氏(トヨタ自動車)…マニュアルBEVを作るに至ったデザイン手法としては、性能目標も大事だが、顧客価値目線も大事であることを紹介。作るまでのステップとしては、“小さく作って共感してもらう”を繰り返して価値を高める必要性を強調した。BEVのすごさとして、モータによって遅くする、トルクを出さない、エンジン音を足すなど“あえて”の味付けがやりやすく、制約の少ない好きな絵が描けるモビリティと総括。学生に対しては、一歩を踏み出すことの重要性などを伝えた。
講演終了後は佐々木信也トライボロジーセンター長による講評があり、その後、附設展示会の見学会が行われた。各ブースにおいては、ファシリテーターによる解説も行われた。
「電動車展示会」では国内外の以下の電動車両の展示がなされた。
・BEV:ホンダ「Honda e」、トヨタ自動車「Lexus(マニュアルBEV)」、日産自動車「アリア」、SUBARU「ソルテラ」、BYD「BYD Seal」
・HEV:三菱自動車「アウトランダー PHEV」、マツダ「MX-30」
また、「ユニット分解展示会」では、ポルシェ「Tycan 4S」、テスラ「model Y」、ヒュンダイ「Ioniq5」、フォード「F150Lightning」というBEVベンチマーク車両4車種のE-Axleなど駆動系部品の分解実演が行われた。