NTNは、空冷式のインホイールモータ駆動システム(IWM駆動システム)と車両運動制御技術(i2-Drive System)を開発、中国自動車設計・製造メーカーである「長春富晟汽車創新技術」(FSAT社)とのライセンス契約を締結した。NTNが技術支援し、FSAT社はIWM駆動システムを搭載した軽量化新エネルギー車(新エネ車)を量産する。
FSAT社総経理・劉 蕴博氏(左)とNTN社長・大久保博司氏(右)
FSAT社が量産する新エネ車には、CFRP製ボディとアルミ鋳造製シャーシを採用したFSAT社の軽量化技術と、NTNが開発したIWM駆動システムおよび、車両運動制御技術が搭載される。
急速に電動化が進む自動車市場において、電気自動車(EV)の主駆動方式は、エンジン部位に大型電動モータを搭載した1モータ駆動方式で、インホイールモータを搭載した量産EVはない。NTNは、2003年から次世代EV用にIWM駆動システムの研究開発に着手し、実証実験などを経て、軽量化、小型化に向けた改良を行っていたが、今回FSAT社の乗用車として世界初となるインホイールモータ搭載EVにNTNのIWM駆動システムの技術が採用された。
今回新エネ車に搭載されるIWM駆動システムは、前輪駆動車に多く採用される「マクファーソン・ストラット」レイアウトに搭載することが可能。既存の基本レイアウトに対応するため、エンジン車のサスペンション部品等を兼用でき、新規設計を必要としない優れた適用性を持つ。また、NTNの開発したIWM駆動システムは減速機の採用によってコンパクト化と軽量化を実現、併せて空冷式を採用することで構造の簡素化を図っている。
さらに、IWM駆動システムを採用することで、駆動輪毎の直接制御が可能となる。NTNでは、ヨーモーメントを制御する独自の車両運動制御技術「i2-Drive System」を開発した。同制御技術は、各駆動輪のトルクを直接コントロールし、左右輪に駆動力差を生じさせ、発生したヨーモーメント(車両が旋回しようとする力)を高精度に制御する。ドライバーのハンドル操作に合わせ、付与するヨーモーメントが旋回性能を向上させるほか、各種センサで車両挙動を検知、車両姿勢が不安定になった場合にもアシストして安定性を維持する。さらに各輪独立の駆動力コントロールによるトラクション制御や回生ブレーキを利用したABS(アンチロック・ブレーキシステム)制御も実現できる。
NTNではIWM駆動システムの量産化と、車両運動制御技術「i2-Drive System」の新エネ車への搭載を支援。新エネ車は2019年に量産開始し、2023年には年間30万台の量産が予定されている。NTNとFSAT社は、新エネ車を中国市場およびグローバルに展開、低炭素社会の実現に貢献していく考えだ。設計・製造メーカーである「長春富晟汽車創新技術」(FSAT社)とのライセンス契約を締結した。NTNが技術支援し、FSAT社はIWM駆動システムを搭載した軽量化新エネルギー車(新エネ車)を量産する。
マクファーソン・ストラットとIWM 駆動システム
減速機付IWM 駆動システム