不二越はこのほど、ユーザーの生産現場において今後、多品種少量生産や部品の小型化などにより多種多様なラウンドツール(ドリルやタップ、エンドミルなど)の需要拡大が見込まれることから、新たなラウンドツールとして、「アクアREVOシリーズ」の新商品と、長寿命と低トルクを実現する「ZTフォーミングタップ」を市場投入する。
アクアREVO ドリルマイクロは2024年までに年間3億円の販売を、アクアREVO ミル4Dでは2024年までに年間1億5千万円の販売を目指す。10月1日に世界同時発売。また、ZTフォーミングタップは2024 年までに年間3 億円の販売を目指す。10月21日に世界同時発売。
同社は2018 年、材料・形状・コーティングの全てを一新した超硬ドリル「アクアREVOドリル」を、2019 年には超硬エンドミル「アクアREVOミル」を市場投入。長寿命・高能率・多用途の特徴が幅広いユーザーから評価され、マーケットシェアを拡大している。
今回、小径ドリルに求められる“折れにくく長寿命”と“バラつきの少ない安定加工”を実現した「アクアREVOドリルマイクロ」、および、側面加工の立ち壁や深いポケット加工に最適な「アクアREVOミル4D 」を新たなラインナップに追加した。
アクアREVOドリルマイクロは、電機・電子や自動車部品の小径穴加工を狙いに、これまでの寸法範囲φ2.0~16.0 のスタブ・レギュラ・セミロングに加え、長寿命・高能率・多用途の特徴を保持しつつ、新たな材料・形状を開発・採用した。5D寸法範囲はφ0.5~1.99で全150寸法。10D寸法範囲はφ0.5~1.99で全150寸法。
アクアREVOドリルマイクロでは折れにくさを追求し、超微粒子超硬合金とオリジナルの成分設計により、硬さと靭性を両立したマイクロドリル専用の超硬材料を新開発。さらに、剛性と切りくず排出性を重視した溝形状を採用したほか、マイクロドリル専用コーティングREVO-Dコート(耐摩耗性の高いAlTi系と耐酸化性の高いAlCr系の被膜をナノレベルで積層+超平滑化処理)を採用。他社従来品に対して、ねじり破壊トルク(工具にねじりを加えた時に、破壊に至る力)が他社従来品比11.2 倍(φ0.5 の場合)を実現。また、求心性と剛性の最適化設計により、穴位置精度を他社従来品比で25%アップし、安定加工が可能となっている。
アクアREVOミル4Dは、自動車・産業機械の幅広い分野に向けて、これまでのアクアREVOミル1.5D・2.5D に加え、ロング刃長に最適な新形状を採用した。4枚刃4D Gタイプ(ギャッシュランド)寸法範囲はφ1~20で全20寸法。
アクアREVOミル4Dでは工具の心厚(工具の先端部の溝底によって形成された部分の厚さ)を大きくし剛性を高めたことで、切削時の工具のたわみを抑制。加えて、シャープな切れ刃形状で切削負荷を低減し、他社従来品に対して被削材の加工面倒れが1/3 以下となり、安定加工を実現した。また、高強度超硬母材との密着性強化膜であるAlCrN膜+耐熱性・耐熱衝撃性強化膜であるAlCrXN積層膜+超平滑化処理からなる専用コーティングREVO-Mコートの採用により、高い耐摩耗性と耐熱性を付与することで工具の摩耗を抑制するだけでなく、優れた耐熱衝撃性を実現。切りくず離れを向上し、切りくずの噛み込みによるチッピングを防止する。
同社はまた、2016 年に新ジャンルの革新タップ「Hyper Zタップシリーズ」を商品化。安定した加工精度と切りくず排出性を両立する刃先・溝形状と、独自の表面処理を施した切削タップで、ユーザーの生産性向上とコストダウンに貢献してきたが、自動車部品などの量産ラインでは生産性向上のため、一層の長寿命化や安定した加工が求められており、切りくずトラブルが発生しない盛上げタップの需要が拡大していた。
これに対し同社では今回、新開発の材料・形状・コーティングで、圧倒的な長寿命と低トルクを実現する、頂点を極めた(Zenith)、強靭な(Toughness)盛上げタップ「ZTフォーミングタップ」を市場投入する。
ZTフォーミングタップでは、盛上げタップ専用に組織を微細化したコバルトハイスを開発。ハイス母材の靭性を維持したまま高硬度化を実現している。
ZTフォーミングタップではねじ山盛上げ部にマージンレスを採用。接触面積を小さくすることで摩擦抵抗を低減し、加工トルクと摩耗進行を抑制。新開発の油溝形状で切削油剤の流量を向上させ、先端まで油剤が届きにくい横形マシニングセンターでも、高い潤滑性能を発揮。
また、新開発のZTコーティングは、靭性を向上させたAlTi 系膜と超平滑化処理の組み合わせにより、膜性能を最大限にし、低摩擦で優れた耐摩耗性・耐熱性を発揮する。これにより、加工機械を問わず、他社従来品に対して3 倍以上の長寿命化を実現できる。
さらに、新形状の採用により、低トルク仕様で加工抵抗を抑え、バリの少ない安定しためねじ加工が可能なほか、延性の強いアルミニウム合金から、高硬度の調質鋼に至るまで、幅広い被削材に対応している。